全短歌









沖からの麦藁帽をさらう風恋の終わりに残していきぬ

水平線飛行機曇に灯台が我の瞳の設計図なり

一行の手紙のような天の川君の瞳に届いていますか

図書室にふたり陽だまり魔法瓶卒業式を閉じ込めている

図書室は陽だまりのなか魔法瓶ふたりの卒業を閉じ込めている

ポッキーにメンズポッキーできたから浮気ゆるしていちごポッキー

来年の春になったら何もかもうまくいくよねさよならの理由

ひとつぐらい楽して入れる大学があればいいねと八月の君

しっとりと波音を消す通り雨少年のまま見送っている

浜辺には内緒話をするようなラムネの泡がよく似合ってる

受験生0,5ミリの綱渡りタフな眼差しおどけた瞳

暗闇を十五分割する電話止みて地球に独りとなりぬ

かくれんぼ目につくようにかくれてるそんな気持ちで君にあいたい

19のすねっかじりの学生が子供の権利条約を聴く

安全という名のベールに包まれている原子力・日米安保

好きだあった落書きぬりつぶされていくように大地に道のびていく

ポケベルに25047403(ゴメン)とうてば街中に素直な僕が降りそそいでいく

学期末ノートを君に会えた分コピーしている深夜コンビニ

吾の気持ち優しく剥いでいくような君のしぐさをしっかりと見る

しかられているそんな君ながめてる吾は今すこし幸せとなる

好きだあった落書きぬりつぶされていくあの日の僕が消え去っていく

あれいいねこれもいいねと言う君が一番いいね show window 

十二時を時計の針が指すようなキスをしていた十七の頃

都会では朝はこっちが渋滞で夜はあっちが渋滞になる

そよ風はふたりにとって句読点しなやかな風待ち続けている 

また来ると猫に約束して帰る君の笑顔の遠い所へ

くび縦にふれないような扇風機君に似ていてスイッチを切る

いつだって君が突然駆け出せばおそろいの夏追いかけていた

君と見るテレビを消せばテレビから見つめられてるような気がする

君と見るテレビはいつも視聴率百パーセントの二人の世界

君と見るテレビを消せば視聴率百パーセントの二人の世界

会えた日の記憶をつなぎあわせている今動き出す急行列車で

ホームでは君の笑顔は僕の目に次はいつかと繰り返している

東京へ大蛇の如くすべりこむ新幹線が君を連れ出す

沈黙が接着剤になっている会話はラジオにまかせていた

今日の四万十川の清流を科学が汚し科学が癒す

しなやかな四万十川の青き魚風を集めて骨にしていく

四万十川の青き流れをしなやかに魚の列が骨にしていく

なんとなく愛想笑いがうまくなった友の会話をじっと見ている

しなやかな四万十川の青き鮎風を集めて骨にしていく

しなやかに風を集めて骨とする四万十川の一面の稚魚

庄川の青き流れをしなやかにほねにしていく一面の稚魚

砂浜で体育座り見た夜空僕たちのもの君たちのそれ

すれ違う老女の歩み艶やかと香りほのかに復興のまち

病院の待合室に鍵一つ首にかける子麦藁帽子

約束を果たし続ける友がいるブラウン管の箱根駅伝

僕たちのものになりゆく砂時計会話はラジオにまかせていた

街を行く女子高生は熱帯魚海の魚の見えない涙

幸せに賞味期限があると言う女子高生のつぶらな瞳

「このドラマはフィクションです」がCMのあとのニュースにとび上がりたり

「このドラマはフィクションです」がCMのあとのニュースにとびかかりたり

「このドラマはフィクションです」放射能被爆ニュースにまで流れ入る

夕日さす街路樹たちに名をつけた時から青き僕だけの森

生きる意味そんなものないだからこそ当たり前に俺生きている

愛という名前なんかをつけたからいろんな愛ができてしまった

約束を交うわしたときからはじまっている大罪を注意してみろ

本当は誰も知らない誰かが僕の知らない僕を見ている

幸せな人生送れ幸せに答えないから僕らは自由

オタクからオタクと言われオタクにはオタクを決める権利はあるの

許すこと憐れむことと受け入れることのレプリカ「君の価値観」

許すこと憐れむことと受け入れることばっかりだコピーライトは

許すこと憐れむことと受け入れることだけ政治宗教親父

許すこと憐れむことと受け入れること繰り返す恋愛ルール

許すこと憐れむことと受け入れることのレプリカ恋愛ゲーム

許すこと憐れむことと受け入れること繰り返す恋愛ゲーム

風化した十九世紀前半の思想書を読む音楽のように

青年はジャズ聴くように風化した十九世紀の思想書を読む

曖昧にはじきだされた世界から永久(とわ)の流行(はやり)を受け入れている

物言えぬ目暗がピカソを見たようなディフォルメされたニュースな世界

携帯の電話帳から君の名を消してしまってさよならをする

タイトルのつかないような恋をしてわがままなキス繰り返している

ナンパしたMの携帯メモリーの?1は父親のもの

中学の頃は三万今は二万零に近づく腕(て)の中の君

若さには賞味期限があると言う女子高生のつぶらな瞳

若さには賞味期限があると言う女子高生とカラオケにいく

若さには賞味期限があると言う女子高生といくラブホテル

幸せに賞味期限があると言う女子高生とカラオケにいく

「ピリオドがない人生になっちゃた」ノストラダムスはずれた夕べ

ピリオドのない人生が待っているノストラダムスはずれた夕べ

リセットのない人生が待っているノストラダムスはずれた夕べ

僕は君の97番目の男プラダの手帳に書き込まれていく

30で死にたいという君を抱く値札がついてるような気がした

ブランドのバッグが欲しいという君は女子高生という名のブランド

左手に携帯電話持ちながらファーストフードの注文をする

明日にも違う男を抱くという君の幸せ期間限定 

明日にも違う男を抱くという君は看護婦になりたいと言う

明日にも違う男を抱くという君は少女になりたいと言う

プラドのチェーンバックを買うために半年バイトする子はいない

エルメスのチェーンバックを買うために半年バイトする子はいない

明日には違うピアスが欲しくなる君ひたむきに今を生きている

「父はいつもテレビをつけたまま寝るの」ライブビデオにうっとりとして

深夜二時テレビをつけたまま寝てる父を横目に二階へ上がる

僕たちの恋にはどんなCMのコピーライトがつくのだろうか

資本主義に対していつか裁判があったら君が証言者だろう

偶然を路上に座り待っていることが今では必然となる

母にはいつも所有格がついている君にもいつかつくのだろうか

母にはいつも所有格がつきまとう君にもいつかつくのだろうか

君という抽象名詞に名をつけるいろんな君がうそのない君

所有格ついた名前で呼ばれてる母親のように君もなるのか

明日にも違う男を抱くという君の名前に所有格なし

援交で聴いたオヤジのカラオケの昔の歌詞に親しんでいる

明日には違うピアスが欲しくなるきのう流行った価値観もある

明日には違うピアスが欲しくなる一日だけの価値観もある

携帯で仲間の存在アピールしファーストフードの注文をする

携帯で仲間の存在アピールし孤独な街を歩きつづける

誰からも縛られないという絆大人の人が教えてくれた

誰からも縛られないという絆ちょっと昔に流行ったらしい

誰からも縛られないという絆僕らはいつも包まれている

誰からも縛られないという絆自由が僕らを束縛している

誰からも縛られないという絆自由が僕らを締めつけている

テレビでは「歴史はいつも繰り返し」毎日だって繰り返すだけ

教科書の「歴史はいつも繰り返し」毎日だって繰り返すだけ

彼女らは「わたしをさがしている人をさがしている」だけナンパされるだけ

彼女らは「わたしをさがしている人をさがしている」だけ路上のゲーム

十代は男を抱いて抱かれてる二十歳を過ぎて抱かれつづける

セックスが死とむすびつく心理学的にではなくエイズウイルス

セックスが死とむすびつくフロイトの分析よりもエイズウイルス

万軍の後盾なるキリストの誕生祝う日本経済 

剥き出しの明日になったら死ぬ言葉ならべつづけるコンビニ雑誌

好きという言葉にチャンスというものがあるなら今がまさにその時

君の名をインターネットで検索す同姓同名ワイン通なり

欠品をはねていくたびあの日見た夢ひとつずつ消えていきます

思い出が増えた分だけお互いをしめつけるキスセックスのあと

思い出が増えていくたびお互いの未来の使い方決めるキス

思い出が増えていくたびお互いの未来を決めるはずもないキス

携帯で会話と無視の中間のメール交換目に見える声

携帯で会話と無視の中間のメール交換裏腹の文字

携帯で会話と無視の中間のいたわりあえるメール交換

しなやかな会話と無視の中間のいたわりあえるメール交換

援交もそろそろダサくなってきたヤバ目の服を着替えて大人

海底に佇むポテトティップスの残骸こそが人類遺産

くっきりと恋の終わりに線を引きすっきりとして風の中行く

くっきりと恋の終わりに線を引く飛行機雲が描く大空

くっきりと恋の終わりに線を引く飛行機雲が空いっぱいに

くっきりと恋の終わりに線を引く飛行機雲よ空いっぱいに

くっきりと恋の終わりに線を引く飛行機雲を見つめつづけた

いつからか円周率が三になる零点一四分のやすらぎ

「なぜ人は人を殺しちゃいけないの」殺したい人もいないくせに

「なぜ人は人を殺しちゃいけないの」たとえ良くてもできないくせに

「なぜ人は人を殺しちゃいけないの」質問者ばかり街はシアター

「なぜ人は人を殺しちゃいけないの」情報化社会も教えてくれない

大好きな君の名字も大好きで対等合併夫婦別姓

「誰にでもいる初めて」と「100番目」どちらが君の大切な人

「誰にでもいる初めて」と「100番目」どちらも君の大切な人

「誰にでもいる初めて」と「100番目」どちらも同じ一人の男

禁止された鯨の肉を食べること罪の意識を定義してくれ

あからさまな援助交際カップルは常に高校生(おんな)の方が元気だ

黒人になりたいという君がいて無知が差別を消し去っていく

苦労したバイトの金は使えない万引きこそが当然の帰結

アメリカには無いだろう陰気な空を高層ビルが隠しつづける

原色のにやりと笑う広告塔陰気な空を隠しつづける

原色のにやりと笑う広告が陰気な空を隠しつづける

ライバルとキロ数円のダンボール追いかける東京サバイバル

日本のマクドナルドの真心をコーラとともに飲み干していく

日本のマクドナルドのスマイルをコーラとともに飲み干していく

ポケットベル・PHS(ピッチ)・携帯移り身の速い僕らは脅迫者なり

カラオケに携帯電話使用拒否すれば企業の脅迫者なり

主義の無い責任がありコンドームエイズ世代のフリーセックス

主義が無い責任も無いコンドームエイズ世代のフリーセックス

選択肢無数に増えていく街が殺風景な家庭生み出す

選択肢無数に増えていく街が仲間意識を分類化する

陰口の訴訟社会が携帯のクリアボイスで伝わっていく

友達の噂話が携帯のクリアボイスで伝わっていく

世代間見分けるコード携帯のクリアボイスで伝わっていく

世代間隔てるコード携帯のクリアボイスで伝わっていく

ストリート見ぬふりをするエリートを下から見下す瞳狩人

ストリート見ぬふりをするエリートを下から見下す群れのプライド

雑誌には「私らしい私」ばかりブランド品を売りつけてくる

青年は革命目指す歴史あり軍部・全学・カルト宗教

心地良い居場所の会話ふわふわのボールを投げる半疑問形

コンビニのおでん食べてるアジア人見かける今日も国歌流れず

どの国と番になればいいのだろう22世紀ニッポニアニッポン

黒髪をアクセサリーに既製品の学歴を着て歩くビル街

震災は遠くにありて思うものニュースの神戸を聞かされている

「出身はどちらなんです」「神戸です」地震のことを聞きたがっている

一面の仮設住宅消え去った広場で少年サッカー観戦

震災を今日も話している夕べ同じところで驚くのだろう

震災の青き灯の点くモニュメントデートのついでによったりもする

新幹線次の停車は新神戸質問をする人が消え去る

ひとりまたひとりと神戸を離れてく特に地震と関係も無く

「いいですねぇ神戸は、ところで、」今日もまた地震とともに生き続けていく

すれ違う老女艶やか薄化粧ほのかな香り復興の街

復興の波が我が街救えども終の棲み家を移らざるえず

気にしても気にしないでも忘れても覚えていてもだめなものもある

数分の地面の揺れが様々な道徳観を剥き出しにする

確実に獲物捕らえる獣らは「自然」となって舞い降りてくる

ゲーセンのサンドバックを撃ちつける被災者に人の限界を知る

教科書にのったとしても数行のことを今でも考えている

街を行く若者たちもそれぞれの1.17の朝を持ちおり

公園で遊ぶ震災知らぬ子を戦争知らぬ僕が見ている

家ふえて吹き込む風も様々に流れ始める神戸の街に

新しい名前にしよう合併をすました企業のように二人も

ピリオドをつけない別れがあるように私の恋も始まっている

後悔もできないままに手付かずのとけたグレープジュース間に

溶けきった氷いつしか僕たちの重心となるグレープジュース

オウム事件阪神淡路大震災’95年のセット販売

マホメットキリスト仏陀孔子らの国が競って核兵器実験

君の名をインターネットで検索す猫になったり旅人だったり

十二時を時計の針が指すようなキスを今でも繰り返している

一滴の水の不足もない海は愛に似ている君に似ている






ホームページのトップへ

短歌の募集、公募、コンクール情報は短歌賞.com

短歌自動作成

短歌の作り方